コラム詳細

障害者スポーツ先進事例調査

その他

高い技術力や産学連携による最先端技術を生かして障害者スポーツ用具を開発している企業を訪問し、スポーツ用義足を中心に、用具・補装具等の開発・製作に係る現状を調査しました。

イマセン

スポーツを活かした共生社会の実現に向けて、障害者のある方もない方も誰もがスポーツを楽しめるようにするためには、障害者への理解を促進するとともに、障害者スポーツを体験したり、より高いレベルを目指したりできる環境を整えていくことが重要であり、愛知県では、2020年度(令和2年度)にスポーツ局が取りまとめた今後の取組の方向性「障害者スポーツの推進に向けた取組~あいちがリードするスポーツのバリアフリー~」において、障害者スポーツ推進に向けた機会創出や普及啓発を盛り込んでいるところです。一方で、障害者がスポーツを始めるに当たって、健常者に比べより多くの用具・補装具等が必要となるほか、それらの用具等が高価な場合もあり、用具・補装具等の確保が困難な場合があることが、障害者がスポーツを気軽に始めにくい理由の一つとなっていることが懸念されています。本調査では、障害者がスポーツを始めるに当たり必要となる用具・補装具等の開発・販売状況について調査しました。

訪問企業(株式会社今仙技術研究所)

今仙電機製作所の子会社である今仙技術研究所は、電動車いすや骨格構造型義足などの研究開発・製造販売を行う、総合福祉機器メーカー・研究開発機関。1971年(昭和46年)に今仙電機製作所の医療器具部として発足。労働災害や交通事故で身体障害を負う人が続いた当時、日本の生活様式に合うものを、メード・イン・ジャパンの品質で創造するため、研究開発・製造販売をスタート。1971年(昭和46年)に日本初となる電動車いすを販売したことをきっかけに、今日まで半世紀にわたって、電動車いすや義足、歩行支援機の研究開発・製造販売を続けている。近年は、障害者スポーツ向けのカーボン製スポーツ用義足板バネの研究開発にも注力している。

関連資料

1 競技用義足

(1)トップアスリート向け義足板バネ「KATANAΣ(カタナシグマ)」

2020年(令和2年)9月に総合スポーツメーカーのミズノ株式会社(本社:大阪市)と共同で、板バネの先端中央部分に孔をあけた形状のスポーツ用義足板バネを開発。カーボン製板バネは、スパイクピンがある接地部分から上部にかけて空気孔を設けることで、空気抵抗を31%軽減。質量も従来品に比べて約15%軽量に、振りやすさを表す慣性モーメントは従来品に比べ約10%小さくした。陸上競技の短距離と走り幅跳びのトップ選手を対象に開発したものであり、2021年(令和3年)4月30日より全国の義肢装具製作所を通じて販売を開始。2021年(令和3年)9月2日、女子短距離の高桑早生(たかくわ・さき)選手がこの義足を履いて、自身3大会目となる東京パラリンピック大会の女子100メートル(義足・機能障害T64)予選に出場し、自己ベストタイの13秒43をマークした(第1組の5位で惜しくも決勝進出は果たせず)。

  • 素材:カーボン(炭素繊維強化プラスティック)
  • 適応体重:~60kg
  • 質量:約600g

カタナシグマ

(2)スポーツエントリー層向け義足板バネ「KATANAα(カタナアルファ)」

2022年(令和4年)7月にミズノ株式会社(本社:大阪市)と共同で開発した、スポーツのエントリー層に向けたカーボン製板バネを販売開始。これまで両社が手掛けてきた板バネは、陸上競技場などで走るための競技専用の義足に取り付けるものであったが、競技用板バネ製作のノウハウを生かし、エントリーモデルとして軽量で扱いやすい板バネを開発。この板バネを装着することで、トップモデルと同様のコンセプトを持ったバネ特性が実現されている。また、日常用義足からの取り換えが容易で、価格も従来のトップ選手向けの競技モデルと比べ安価になっている。

  • 板バネ:カーボン(炭素繊維強化プラスティック)、ソール:ポリウレタン

カタナアルファ

体験の様子

2 歩行支援機

(1)ACSIVE(アクシブ)

国立大学法人名古屋工業大学と共同で、片まひの方や足腰が弱まった高齢者など、自立歩行はできるが歩行に不安がある方を対象とした歩行支援機を開発。自然な歩行原理(受動歩行)に基づいて開発されたもので、バネの力と振り子の力を利用し脚の振り出しをサポートするもの。取り付けが簡単なシンプルな構造で、モーターやバッテリーなどを使用していないため、音や充電を気にすることなく、旅行時や被災時にも利用することができる

  • 取扱い:片脚用(右脚用・左脚用)・両脚用を展開
  • サイズ:フリーサイズ(カーボンチューブは3サイズから選択) 腰ベルト胴囲110cmまで調整可能
  • 重量:約550g(片脚用)、1,050g(両脚用)

ACSIVE(アクシブ)

(2)aLQ(アルク)

アルクは、同社が2014 年(平成26年)9 月に発売したアクシブのノウハウを継承し、アクシブと同様にモーターやバッテリーを使用しない歩行支援機として、誰もが手軽に装着しやすくしたもの。

  • 取扱い:両脚用
  • サイズ:フリーサイズ(長さ調整可能)
  • 重量:760g

aLQ(アルク)

体験の様子

アクシブとアルクの違い

アクシブは、脳卒中などで体の片側にまひが残る方、足の振り出しが困難な方など、基本的には、歩行に障害のある方をアシストするためのもの。一方、アルクは、アクシブをさらに軽量化し、健康な方にも、より健康を目指す方にも、手軽に使えるように開発したもの。毎日のウォーキング、レジャーや旅行など、歩くことを楽しみたい方や、生活範囲を広げたい方の歩行をアシストするためのものであり、装着感も、アクシブは膝下にしっかりと、アルクは膝上に軽やかに留めるという違いを出している。

3 歩行測定システム

人生100年時代に向け、「いつまでも自分の足で歩きたい」というコンセプトを基に歩行研究に着手し、歩き方を科学的に評価するシステムの開発を進めており、グローバル開発センターにおいて、人の歩行を簡便に可視化できる新しい歩行測定システムを開発した。歩行測定システムは、画像処理技術を活かして、歩行者がマーカーを身に付けなくても歩く様子を撮影するだけで歩行特徴を可視化することが可能であり、歩行者に負担をかけることなく測定することができる。持ち運びできるよう軽量・コンパクトなシステムとしたことで、いつでもどこでも簡便に「歩行」を測定することが可能となる。順天堂大学の協力を得ながら開発を進めていて、製品化を目指し開発を推進している。


歩行測定システム

4 質疑応答

(1)名古屋市が新設した補助制度に関する問い合わせや反響

制度ができて間もないため、現時点では問い合わせ等は入っていない。
(外部リンク)障害者スポーツ競技用補装具等購入費補助事業(名古屋市)

(2)販売実績

電動車いすの販売累計台数は37,000台以上。
義足は、国内のマーケットシェアが25%。海外にも展開しており、中国、タイ、米国、EUなどで販売実績がある。ロシアによる軍事侵攻で注目を集めているウクライナにも代理店を持っており、このほど無事が確認され、社員一同安堵したところである。1978年から毎年放送されている「24時間TV」の寄贈品として、当社の電動車いすが選定され、累計で1,400台以上を納品している。スポーツ義足の販売累計数は60足であるが、部品提供が中心のため、実績の算定が難しい。無動力歩行補助装置のアルクの販売累計台数は1,400台。健康器具としての販売には限界があるため、欧米やカナダの医療機関との共同研究を通じて、更なる販売が期待できる医療機器としての販売を目論んでいる。

(3)第5回アジアパラ競技大会(2026年に愛知・名古屋で開催)への関わり

当社の社風として、特定の選手をしっかりとサポートしたいとの思いがあり、不特定多数の選手に用具を提供するサプライヤーとして活動する考えは現時点では持っていない。大会スポンサーについては、興味を持っているが、本業の業績が低迷しているため、現時点では難しいと考えている。パラリンピックと比べて大会規模が小さいアジアパラ競技大会については、当社でもスポンサーになることができるかもしれないので、今後検討したい。

(4)競技用車いすの開発予定

当社の本業は電機屋であり、電機を活用したモノづくりに注力しているため、手動の車いす分野への進出は今のところ考えていない。とりわけ競技用車いす分野は、一部メーカーの寡占状態にあり、参入障壁の高い分野であると認識している。電動車いすのニーズ把握のため、県民の意見を聞くことのできるイベントなどの機会があれば教えて欲しい。


体験の様子

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