コラム詳細

愛知県新体育館建設工事の現場事務所を取材しました。

その他

仮設の現場事務所2棟

 みなさん、ただいま名城公園内で建設中の「愛知県新体育館」をご存じでしょうか?
 今年の夏から着工しており、2025年夏にオープンを迎える予定です。
 延べ床面積約63,000㎡、地上5階建ての施設となる計画で、2026年に愛知・名古屋で開催されるアジア競技大会をはじめとした国際大会の他、コンサートを開催したりもできる施設になります。

 ところで、みなさんは工事現場にある「現場事務所」に対してどんなイメージをお持ちでしょうか。小さいコンテナが地面にポツンと設置してあって、中に人がいる時もあるけれど何をしているのかわからない、なんとなく狭そう、水道や電気が通っているのかも不明、そもそも立入禁止の場所にあるので全貌がよくわからない、なんて思っていませんか?

 2022年夏に着工した愛知県新体育館の建設現場にも、現場事務所が用意されています。
 現場事務所の中は一体どうなっているのか?何のために置いてあるのか?そんな疑問にお答えするため、今回は、愛知県新体育館建設現場にある現場事務所を取材してきました。

関連資料

1 現場事務所って何に使うもの?
  通常、現場事務所には、工事を進めていく作業員さんたちの更衣室や、休憩スペース(詰所)といったものが用意されています。
  ですが、愛知県新体育館は数年間にわたって建設を行うビッグプロジェクト。
  詰所や更衣室といった基本的な機能のみでなく、オフィスが入った「事務所棟」も設けられています。事務所棟では、施工会社(今回は前田建設工業株式会社)や事業者(株式会社愛知国際アリーナ)の職員が働いています。

2 現場事務所内の様子
  ではさっそく、現場を訪ねてみましょう。
  仮囲い(工事現場の周辺に設置された、白い仮設のフェンスのこと)に設置された小さな扉をくぐっていきます。


白い仮囲いに設置された扉

仮設の現場事務所2棟

 扉を抜けると、すぐに現場事務所が目に入ります。
 手前に見えているほうが、現場で作業を進める作業員(職人)の方々が主に活用する「詰所棟」で、奥に見えるほうが施工者や事業者が活用する「事務所棟」。二棟とも3階建てで、それぞれ延床面積1,545㎡、1,635㎡のビッグサイズです。


緑の柵で区切られた現場内の歩道

 緑色の柵で仕切られた中を移動していきます。多くの重機や車両が出入りする工事現場。こうして歩行ゾーンを区切ることで、歩行者の安全を確保しています。


通門管理ハウスの入口
机等がおかれた通門管理ハウス内部の様子

 柵に沿って歩くと、通門管理ハウスに到着します。
 内部には、感染症対策のアルコールや体温計の他、作業員の方々の勤務時間を記録するためのカードリーダーが設置されています。
 「CCUSカードリーダーはこちら」と記載されているのが見えますか?CCUSとは、建設キャリアアップシステムの略称です。国土交通省と建設業界で推進しているもので、まだ普及途上のものとはいえ、建設業全体で統一のシステムだそうです。
 「技能者が、技能・経験に応じて適切に処遇される建設業を目指して、技能者の資格や現場での就業履歴等を登録・蓄積し、能力評価につなげる仕組み」(国土交通省webサイトより引用)とのこと。
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 【引用元】
  国土交通省.「建設市場整備:建設キャリアアップシステムポータル-国土交通省」
 (https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/totikensangyo_const_fr2_000033.html)〔参照 2022/11/24〕
 【参考】
  建設キャリアアップシステム.「CCUSについて:建設キャリアアップシステム」
 (https://www.ccus.jp/p/about)〔参照 2022/11/24〕
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 勤務管理を行うという性質上、ここを通過しないとこれより先には進めないようになっています。

 ここまでは基本的に全員が通る場所ですが、この後は人によって事務所棟・詰所棟へと行先が別れます。
 今回は、まず作業員の方の足取りを追ってみましょう。

 最初にご説明したとおり、作業員の方の更衣室等は詰所棟に用意されています。


ロッカーとベンチのある男子更衣室

こちらが詰所棟内の男子更衣室ですね。この場所で作業着に着替えます。突き当りのドアはシャワールームにつながっています。仮設の現場事務所ですが、水道から水を引いているためシャワーも使えます。当然ながらトイレも水洗式です。


机・椅子・ロッカーのある女子更衣室

 もちろん、女子更衣室もあります。男性ほど多くはないですが、女性の作業員の方もいらっしゃいます。

 作業着への着替え後、作業員の方は一日の作業開始前に朝礼に参加します。


朝礼台

 朝礼では、朝礼台に設置されたディスプレイ(150インチ)も活用しながら、わかりやすく当日の作業内容や注意すべき危険要素について説明がなされます。
 工事現場では、安全対策がとても重要。白い壁をよく見ると、向かって左隅にたくさんの白い紙が集まっている場所があります。KY報告書と書いてありますね。


KY報告書

 KYとは危険予知のこと。毎日、朝礼後に作業員のグループごとに集まって危険予知報告書を作成し、ここに集約して掲示します。
 危険予知報告書には、各グループの本日の作業内容や、それに伴う危険事項、危険事項への対策が記載されています。安全に工事を進めるための工夫ですね。
 朝礼とKY活動が終わると、それぞれの作業が始まります。

 お昼ごはんは詰所棟内で食べることができますが、現場を離れる前に立ち寄らなくてはならない場所があります。


洗い場所

 ここです。何のための場所だかわかりますか?


長靴を洗う機械

 こんな機械が並んでいます。


長靴を洗う実演

このようにへこんだ部分に足を入れて使います。
内部でブラシがぐるぐる回転しており、長靴を洗うことができます。

ここは手足についた泥や砂埃を落とすための場所なんですね。


靴裏を洗う機械の実演

 長靴ではない靴を履いた人のために、こんな機械も置いてありました。ノズルの先から風や水が出て汚れを落とします。


手洗い場

もちろん、手洗い場もあります。


水飲み場
製氷機

 ちなみに、自由に活用できる水飲み場や、製氷機も設置されています。夏場には特に大活躍するそう。


 砂埃を落としたら、現場を離れて再び詰所棟へ移動します。
 こちらは作業員の方の主な休憩スペース、詰所です。


机といすが並んでいる詰所の風景

 詰所棟の2階を見ると、たくさんの机と椅子が用意されています。同様のスペースが反対側にも広がっており、なかなかの広さで、515㎡あるとのこと。
 これだけでも広いと感じますが、3階にもまったく同じ広さの詰所が用意されています。合計1,030㎡もの広さ!
 これだけ広いと、相当ゆとりのある設計なのでは?と思いきや、なんと本事業、最大1,000人もの作業員が集まることが想定されており、1,000人が集まるためのスペースとしてはこれでも足りないくらいとのことでした。
 現時点ではまだそれ程の人数は集まっていないため、3階は閉鎖しているそうです。


机といすが並んだ食堂。

 こちらは、食事をとるための休憩スペースで、およそ244㎡あります。仮設事務所内とは思えない設備ですね。
 お昼休憩後には、また各自の作業に戻っていきます。

 現場で働く作業員の方々の足取りの案内はここで一段落です。
 今度は事務所棟を覗いてみましょう!

 1階はこの工事の下請けの企業さんが活用する部屋が集まっており、3階には、愛知県新体育館事業の事業主である株式会社愛知国際アリーナのオフィス等が入っています。


机といすの並んだオフィス

 愛知国際アリーナのオフィスです。木目柄の机がおしゃれですね。この日はほとんどの方が出張中でした。

 3階にはその他に、応接室や大・中・小の会議室が用意されており、合計で435㎡もの面積があります。


机といすが多数ならんだ会議室。2つの大画面ディスプレイが設置されている。

 こちらが最も広い大会議室。かなり広いですね。100人規模の会議も開催できます。
 ビジョンが設置されていて、オンラインミーティングにもばっちり対応しています。86Ⅴ型(約190㎝×約107㎝の画面)の大画面ですが、部屋が広すぎて小さく見えますね。


 では、2階に降りてみましょう。現場事務所ツアーも終盤です。


机といすがならんだ、施工会社のオフィス

 こちらが施工者である前田建設工業株式会社の職員の方が勤めるオフィスで、545㎡の広さがあります。図面を作成する班、内装・外装等を担当する班、躯体(構造体)を担当する班、電気・機械といった設備周りを取り仕切る班、事務的な業務を担当する班などがあり、44名(2022年10月時点)の方が働いています。


特殊な配置の机。6つの机で1つのグループになっている。机を3つの机2列に分け、背中合わせになるように配置されている。

 よく見ると、少し変わった座席の配置になっています。真ん中にある大きな柱が邪魔にならないように工夫して配置しているそうです。
 この仮設事務所、詰所棟もそうですが、大空間を確保するために通常ではくっつけない方向にもコンテナをくっつけており…


通常のコンテナ接続。コンテナが一列に並んでいる。
新体育館事業のコンテナ接続。2列に並んでおり、列と列の間も接続されている。

 どうしても赤いライン上に大きな柱が出てきてしまうそうです。


柱が並ぶ事務室

 この部分ですね。

 この空間をできるだけ有効活用しようとして生まれたのがこの配置で、環の形に机を配置することで一人一人のスペースを増やしたのみでなく、振り返れば簡単に環の中の職員と相談できる配置になっているとのこと。


特殊な配置の机。6つの机で1つのグループになっている。机を3つの机2列に分け、背中合わせになるように配置されている。
振り返ることで簡単に打ち合わせできる様子。

 機能性に優れている上に見た目がかっこいい配置で素晴らしいですね。「アリーナの環(和)」をテーマにした配置で、社内でコンペを行って決めたそうです。


ロッカーが並ぶ更衣室。
ランドリーサービスの様子。洗濯物を回収する籠が更衣室に設置されている。

 事務室のそばには、職員の方のための更衣室が用意されています。
 クリーニングサービスも利用可能とのこと。


円形の机と木製の椅子。机の上にはルームフレグランスがおかれている。

 女子更衣室には、おしゃれな休憩スペースも用意されています。

 最後の部屋はランドリー&シャワールーム。社員の方は自由に活用できるそうです。


乾燥機つき洗濯機
シャワールームの扉

 きちんと乾燥機まで用意されています。夏場は特に重宝しそうですね。

 いろいろな場所を回りましたが、これにて現場事務所ツアーは終了です。

 最後に、現場事務所を案内してくれた前田建設工業株式会社の社員の方にお話しを聞きました。

 Q:いろいろとご案内いただきましたが、普段現場事務所を活用していて特にありがたいと感じる設備・機能は何ですか?
 A:シャワールーム、ランドリールーム、クリーニングサービス。
   ランドリールームには、乾燥機付き洗濯機があります。休み時間に回して、仕事中に乾燥まで終えるという形で活用する職員が多いです。クリーニングサービスも福利厚生の一環で用意されています。クリーニング業者さんが服を回収してくれます。
   また、女子トイレに鏡台が設置してある他、プライベートボックスがおいてあるところは良いと思います。プライベートボックスとは、個人用の小さいロッカーのようなもので、各々化粧品等をしまっています。

 Q:逆に、この機能が欲しいというようなものはありますか?
 A:仮眠室。昼休みは照明が落とされるので、昼寝をする人が多い。現状では、自分の机の下とか、床で寝ている人が多いです。ゼネコンならよくある光景じゃないでしょうか。週に2度清掃業者が入っていますので、床は清潔に保たれていますし、作業着だからいいやという感覚もあると思いますが。

 Q:仮設事務所ということですが、真夏でも空調は特に問題ないのでしょうか?
 A:強力な空調設備が備えられており、真夏でもすぐに涼しくなります。真夏の現場に出て作業をした後、きちんと涼しさが感じられるように管理されています。

 Q:いろいろと働きやすいように環境が整えられていると感じました。
 A:今回、この事業の統括所長が、QOLを大切にしようということを掲げてくれており、広いスペースが確保された詰め所や、クリーニングサービスの導入等、様々な職場環境の改善につながっています。職場環境を整えたうえで、最高のパフォーマンスをしてもらう、という方針です。昔と比べると、確実に働く環境は良くなってきていると感じています。

3 おわりに
  いかがでしたでしょうか?
  皆様のイメージよりもキレイで広かったのではないでしょうか!
  普段は仮囲いの中に隠れていて見ることができない現場事務所の雰囲気を少しでも感じていただけたら幸いです。

 ちなみに、愛知県新体育館建設工事の仮囲いの外側には季節ごとの飾りつけをしている場所がありますので、名城公園をお訪ねの際はぜひ探してみてくださいね!


ハロウィーンの飾りつけがおかれた仮囲いの一角。

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